ゆけむり紀行

2015.4/9

浮島望む極上リゾート

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天草の景色を存分に楽しめる「天空の船」

僕は海が好きだ。港町に生まれ育ち、オヤジは灯台守だった。今では自宅も海沿い。食材の嗜好も肉より魚派。海へのゆかりを列挙すればキリがない。残念なことに九州では、山あいに湧く温泉が圧倒的多数を占める。しかし、今回はそんな劣勢(?)を吹き飛ばすような、龍宮(りゅうぐう)へ車を走らせた。

九州自動車道・松橋インターを降りて約60分。天草五橋のたもと、小さな岬の先端に立つ「天空の船」(ホテル竜宮の姉妹館)が今回の目的地だ。真っ白で巨大な豪華客船が、海に向かって出航しているかのような外観にときめきながら館内へ。シックなレセプションの左手にはお洒落なインテリアが配され、全面ガラス張りの向こうには宙に浮かんでいるようなプールが鎮座する。とりあえず、プールサイドでアイスコーヒーを味わいながら多島海の風景を眺め、ゆったりとリゾート気分を楽しむ。今回泊まるのは「アイランドビューヴィラ」という旅館でいうところのいわゆる「離れ」。レセプションからカートで向かう。天草松島らしい松林を支配人の先導で進み、到着。

外からはこぢんまりと感じたが、中に入ってみると2人ではもったいない広さ。部屋に流れるジャズの音色に歓迎感を覚えながら、おもむろに室内をチェック。モダンさを追求した造りと家具、サービス精神旺盛な冷蔵庫内とアメニティ、デーベッドと露天風呂をしつらえたテラス、そしてそこからの景色・・・。久しぶりに感じる高揚感だ。これからの格別な時間への期待感も一気に高まった。さて、落ち着いたところで、プシュッ。缶ビールを片手に露天風呂へ。穏やかな海面に顔を出すように点在する浮島が織り成す風景美は一枚の絵画のよう。そんな景色を眺めながら温泉に漬かる。湯船のヘリには冷えた缶ビール。もう、言うことなし!珠玉の時間がゆっくりとすぎる。

漬かったり、上がったり、存分に温泉を楽しんだ後、夕食会場へと向かう。鮮やかな色使いや盛りつけが芸術的なほどに美しいイタリアンをワインと一緒に味わう。抜群の鮮度を誇る天草の食材のうま味を引き出し、強弱・濃淡・大小、名曲のようなリズム感のあるコースは、絶品としか言いようがない。
龍宮には四方四季と呼ばれる一度で四季の全てを楽しめる庭があったという。ここ「天空の船」にもおいしさ・優雅さ・気持ちよさが一度に体感できる時間がある。これぞ実在の竜宮城、極上の温泉リゾートだ。
<西スポ2014年8月27日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>

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ヴィラ
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露天風呂
  • 【おすすめプラン】
  • ●天草イタリアンを楽しむプラン
  • 九州屈指の食材の宝庫・天草という立地を最大限活かしたプラン。近海の鮮度抜群の旬の魚介は元より、地元のブランド肉や有機野菜をシェフが華麗に昇華させたイタリアンをご堪能ください。
熊本県・天草 松島温泉「天空の船」

【住所】熊本県上天草市松島町合津5984の2 【TEL】 0969-25-2000
【HP】http://www.tenku-f.jp/