ゆけむり紀行

2014.10/21

600年の名湯 トロ~りとした肌触り

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温泉に漬かる花田

今から10年ほど前、出版社勤務時代に「ハナダ・オンセン・パラダイス」というムック本を出版した。九州各地から厳選した温泉を実際に体験し、リポートしたものだ。当時の私が選んだ61か所を「秘湯」「絶景」「本物」「名湯」「貸切」「懐古」というカテゴリーに分けて掲載。約4ヶ月かけて山口県から鹿児島県の薩摩硫黄島まで巡ったことを思い出す。自分で出版企画を考えて、自分で採用して、自分が漬かりたい温泉を巡る。これぞまさに職権乱用ではないか!と、たったいま気付いた。が、さして反省することもなく、今回はその61か所のうち「本物温泉」と「懐古温泉」ともにノミネートされる山口県の長門湯本温泉に行ってきた。

「ハナダ・オンセン・パラダイス」で紹介したのは公衆浴場の「恩湯・礼湯」だったが、唐突に「せっかくの名湯を楽しむならモダンな雰囲気もオツなものかも!?との浮気心が芽生えて山村別館」に行先を変更。急な取材依頼にも関わらず、にこやかにご快諾いただき、早速、温泉へ。

この日は貸切だったため、写真映えのする女性用の大浴場に入浴させてもらえることになった。いざ、いざ、いざ、禁断の女性専用露天風呂へそろ~りと腰を落とす。なぜか緊張している。しかし、10分も漬かっていると、そのワケのわからない緊張感もトロ~りとした肌触りの温泉の中に染み出していったようだ。白を基調にした洋風なデザインと600年もの歴史を持つ名湯という意外性、そして、たまりにたまった私の心の中のアクまで洗い流してくれそうな清潔感を感じながら漬かるのは、紛れもなく、本来なら女性だけしか漬かることができない、女性専用の露天風呂なのだ。
「う~ん、マンダム」。意味もなく、なぜか満足した時に頭に浮かぶフレーズがつい口に出た。暑くもなく、寒くもない、絶好の気候の中、少しぬるめのお湯を楽しむ。じっくりと、まったりと。もし万が一、何かの手違いで女性が入ってきたら…。などという不純な気持ちはみじんもなかった、と別に断言しなくていいが、とりあえず特記しておく。

湯上りは、体の乾きが早い清涼感を実感しながら、いつまでもポカポカとした保温効果も抜群だ。開湯以来600年湧き続ける温泉力は、ダテじゃなかった。
<西スポ2014年7月16日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>

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男性側露天風呂
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山村別館外観
  • 【おすすめプラン】
  • ●板長にまかせな祭*個室又は部屋食でゆっくりと!
  • 別棟「しぇふず」のプラン。地元の旬の食材を使った板長渾身の会席料理が、客室か専用個室で味わえる。
山口県・長門湯本温泉「山村別館」

【住所】山口県長門市深川湯本字川尻533-1 【TEL】0837-25-3011
【HP】http://www.y-bekkan.jp/