ゆけむり紀行

2014.7/22

ヌルぬる湯で夜もぐっすり

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緑に囲まれた大和屋の外観

秦の始皇帝より不老長寿の薬を探す命を受け、海を越えて来日した徐福が発見したと言われる「古湯温泉」。その開湯は2200年前にさかのぼる。歴史ある名湯は別名「ぬる湯」とも呼ばれる。源泉温度が39.5度とぬるめなことと、アルカリ成分からくる肌のヌルヌル感がその由来だ。お湯は温度によって効能が変わる。熱めのお湯は交感神経のスイッチが入り、アドレナリンが分泌され興奮状態になる。ぬるめのお湯は、逆に副交感神経が活発化し、リラックスして眠気を呼ぶ。なので、朝湯は熱め、夜はぬるめのお湯に漬かるのをおすすめする。そんな古湯温泉から、今回紹介するのは「旅館 大和屋」。

最近になって緑が増え始めた温泉街。ひときわ自然との一体感を醸し出す外観は、ぬる湯同様、旅人にほっとする安心感を与えてくれる。実はこちらにバラ風呂なるものがあると聞き伺ったのだが、木曜・金曜限定ということで、この日は残念ながら体験はできなかった。ご主人いわく、ぬる湯によるリラクゼーション効果をさらにバラの香りが増幅させて、優雅な気持ちになるのだとか。

だったら・・・ということで、今回は露天風呂付きの大浴場に漬かることにした。流行りの岩造りの露天風呂に慣れたせいか、昔は普通だったであろうタイル張りの浴槽が逆に新鮮味すら覚える。清潔なお湯が心地いい。こぢんまりとした露天風呂にも漬かってみた。これが求めていた「ぬる湯」だ。外気に触れるせいか、内湯より若干温度が低い。
 
この日は偶然にも貸し切りだったため、露天風呂も大浴場も独り占め。青空を見上げながら、じっくりと漬かる。全身の力が抜けていく。体から緊張感が溶け出す。あ~。またやってきた。このまま眠りたい病が。何度となくこの病のおかげでおぼれかけたことがある。ボワーッとしたひとときを楽しむ。指先がシワシワになったところであがる決心をした。

湯上りのぽかぽかの保温効果とサラサラした清涼感も古湯温泉の特徴だ。ロビー横の喫茶コーナーでひき立てのコーヒーを味わいながら、しばしその余韻を楽しんだ。
<西スポ2014年7月2日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>

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客室
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タイル張りの大浴場
  • 【おすすめプラン】
  • ●部屋食・半露天風呂付離れで愉(たの)しむ佐賀牛&山の幸会席
  • 切石でできた半露天風呂が付く離れの部屋食で、佐賀牛のイチボという希少部位を石焼き味わえる。1日1組限定のプラン。1泊2食、平日:19,440円(税込)、休前日:20,520円。
佐賀県・古湯温泉「旅館 大和屋」

【住所】佐賀県佐賀市富士町古湯860 【TEL】0952-58-2101
【HP】http://www.furuyu-yamatoya.jp/