2014.6/11
はしご湯的なサービスとして、今や全国的に知られる黒川温泉の「入湯手形」。小国杉でつくられた木製の手形を1200円で購入すると、そこに貼られた3枚のシールが入浴券の役割を持つ。黒川温泉に到着したらまず、温泉街のど真ん中に立つ観光案内所の機能を備えた「風の舎」に立ち寄り、24カ所の露天風呂が載ったリーフレットをゲットしよう。
これを見ながらどこに入るか品定めした後、さぁ、湯めぐり開始!というのが定番の楽しみ方だ。そんな黒川ならではのスタイルの拠点として、どこよりも便利な場所にあるのが、今回紹介する「旅館 南城苑」と言っていいだろう。
温泉地でありがちなパターンとして、便利な立地=風情に欠ける、というのがよくあること。しかし、こちらは違う。「風の舎」の駐車場に面しながら、木々に囲まれた石段を下りていくと、まずは足湯付きの囲炉裏(いろり)が目に飛び込んでくる。和風情緒と隠れ家風情が漂い、いい雰囲気を醸し出している。
黒川温泉らしいエントランスでチェックインした後、向かうはもちろん露天風呂。以前にも紹介させていただいたが、ここ黒川温泉は全旅館が自家源泉を保有し、それぞれ泉質が違うという全国でも珍しい温泉街なのだ。そしてここ「南城苑」の泉質はナトリウム―硫酸塩・塩化物泉。美肌の湯といわれる泉質は複数存在するが、特に40歳を過ぎた人には、この泉質をおすすめする。
アルカリ性や硫黄成分を含んだ良泉だと、角質を落としたり、漂白効果があったりで肌がつるつるキレイになるといわれるが、どうしても乾燥するので湯上がりのケアが不可欠。その点、こちらの泉質はナトリウムによる保湿効果や塩素によるコーティング作用が含まれるうえ、硫酸塩泉には肌の蘇生効果もあると言われている。
そんな温泉うんちくを従え、いざ入湯。腰痛持ちでもあるかのようなスタイルで息を止めたまま、ゆっくりと湯船に腰を落とす。そして、大きく息を吐き出す。「ふ~、はぁ~」。ありきたりだが、気持ちいい。先ほどのうんちくを思い出しながら、優しく、体中に良泉をすり込んでいく。日々の不摂生で蓄積された毒素が、湯煙とともに体から蒸発してるような気分になってきた。
いつにも増してのんびりと漬かった。湯上り後、体がいつまでもぽかぽかとし、気持ちい汗がにじみ出した。どうやらすっかり健康になったと見える。だから温泉はやめられない。これで明日からもまた、おいしいお酒をガブガブ飲むことになりそうだ。
<西スポ2014年6月4日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>
【住所】熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6612の1 【TEL】0967-44-0553
【HP】http://www.nanjoen.com/