ゆけむり紀行

2014.3/26

曲がりくねった道の奥地に佇む、最高の一軒宿

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道の突き当たりにたたずむ和室旅館の構え

「一軒宿」とは、そもそも一つの温泉地内に一軒だけが存在する宿のこと。ところが昨今、同じ温泉地内に複数軒の宿が存在していても、隣接地に建造物がなく、自然に囲まれていればそう呼ぶケースも多い。いやいや、やはり「一軒宿」が秘湯ムードを連想させるワードである以上、一温泉地一宿であってほしい…と思うのは温泉好きのさがだろう。今回紹介する飛瀬温泉「天河山荘」は、まさしく一軒宿中の一軒宿である。

黒川温泉より車で約10分。この宿のためだけに舗装された細く曲がりくねった道を進む。途中、この道で大丈夫だろうか、と不安を感じる率はおそらく90%以上。突き当たりにたたずむ和風旅館の構えを見て胸をなでおろす。そして敷居をまたぐと期待感が湧き上がってくる。道中の不安感→到着時の安堵(ど)感→ロビーでの期待感。この心境の変化は一軒宿らしいロケーションならではのものだ。

チェックインの作業を済ませ、客室へ向かう。九十九折の回廊で結ばれた全6棟の離れはすべて温泉付き。早速、その温泉へ。客室浴槽とは思えないほど広く、大の大人が5人は一度に漬かれそうなほどゆったりとしている。ジャバジャバと誰に気遣うこともなく、思う存分に掛け湯を済ませ、おもむろに入浴。水うめも、加温もなし、源泉そのままの天然温泉が注がれ続けている。

客室の風呂=自分だけのお風呂。順番を待っている他の客もいない。どれだけでもこの浴室を独り占めできる。ぜいたく感が増幅してきたのか、歌いたくなってきた。「い~い湯だなっ♪あははん♪」。徐々に声のボリュームも上がってくる。そう、客室も離れ形式なので隣室への迷惑もあまり気にしなくていいのだ。

気持ちよか~。体中をマッサージしながら、しばし湯に身を委ねる。はっ、し、しまった!忘れた、缶ビールを!私としたことが、なんという大失態。まるで待ちに待ったももクロのライブの日をうっかりと忘れてしまったようなものではないか。と思ったけど、まあいいか。夜は長い。夕食後のひとっ風呂の楽しみにしよう。 さて、ライブのチケットが無駄にならずにすんだところで、もう一曲…♪
<西スポ2014年3月19日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>

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期待感が湧き上がる天河山荘のロビー
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客室に完備されているゆったりした浴槽
  • 【おすすめ宿泊プラン】
  • ●「エビ尽くし夕食会席プラン」。
  • ●夕食は、車エビの刺身にサラダ、天ぷらに丼もの、大エビの塩焼きなど。熊本県天草産の新鮮な車エビを使用した会席料理を個室の食事どころで味わえる。
熊本県・飛瀬温泉「天河山荘」

【住所】熊本県阿蘇郡南小国町飛瀬2820 【TEL】0967-48-6620
【HP】http://www.tengasansou.com/