ゆけむり紀行

2014.2/5

コバルトブルーの源泉から望む雪景色の小国富士

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コバルトブルーのお湯の向こうに涌蓋山を望む

「わいた温泉郷」とは、熊本県小国町内に点在する「岳の湯「はげの湯」「山川」「地獄谷」「麻生釣」「鈴ヶ谷」「日平」という小さな温泉地の総称である。その一つ、最もインパクトの強い温泉地名である「はげの湯」へ足を運んだ。

初めてその名前を聞いたのは二十数年前。ご想像通りというか何というか、なにっ、毛が生えてくる効能を持つ温泉なのか!?と当時まだ心配無用だった私ですら、興味を持った覚えがある。残念ながら命名の由来は全く別モノ。地熱により草木が育たない「はげ地」とか、日当たりが良い場所を「はげ」と呼んだことらしい。さて、そのはげの湯に立つ「わいた山荘」のリニューアルした貸し切り露天風呂を紹介しよう。こちらの旅館には客室が全7室、貸し切りで利用できるお風呂が6つ、順番待ちをすることはまずない。いつでも温泉が独占できるのだ。しかもそのお風呂の趣、そして稀少な泉質が温泉ファンをトリコにしている。

福岡育ちの私には冷えすぎた感のある空気の中、リニューアルした「桶(おけ)ん湯」へ。ご年配の方にはちょっときついかもしれない階段を登った先に登場。素早く服をはぎ取り、温泉がなみなみと注がれているその巨大な桶へと飛び込む。冷え切った体に温泉の優しいぬくもりがじわじわ、じわじわ、浸透してくる。足の指先までぬくもりが行き渡ったころ、やっと周囲の景色が目に入ってきた。正面は小国ののどかな田舎風景が広がり、左斜め後ろには雪化粧した小国富士と呼ばれる涌蓋(わいた)山を望む。抜群の開放感、立ちのぼる湯けむりがアクセントとなった名峰を望む絶景の中、コバルトブルーの源泉に身を委ねる。空を見上げ、ヒンヤリとした山の空気を頬に受けて、のんびりと、ゆったりと漬かる。「あ~、ホントに気持ちいい・・・」。正直なところ、取材なんてそっちのけで、指の皮膚がシワシワになるほど堪能した。この気持ちよさを体感できるのなら発毛効果など何するものぞ。温泉のありがたみが一層増幅されるこの時期だからこそ、ぜひとも、訪れたい温泉宿である。
<西スポ2014年1月29日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>

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幻想的な雰囲気の「竹林の湯」
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貸し切り湯
熊本県・はげの湯温泉「わいた山荘」

【住所】熊本県阿蘇郡小国町西里3006-2 【TEL】0967-46-4553
【HP】http://www.waitasansou.com/