2014.1/17
貧乏暇なし(涙)というわけか、遠出するほどの時間の余裕はない。でも湯船に手足をを投げ出してゆっくりしたい。「たまにはぷらっと近場の温泉に」なんてことを思ったとき、迷うことなく向かうのが、こちらの脇田温泉「湯乃禅の里」だ。脇田温泉は福岡都心部に最も近い温泉街でありながら、開湯は奈良時代までさかのぼるという歴史ある名湯。清流・犬鳴川を中心に田畑が広がる風景は、都心部より車で約45分の距離とは思えないのどかさをまとう。その高台には、立ち寄り入浴施設「湯乃禅の里」が誇らしげに立っている。こちらがオープンした20年前は温泉ブームのまっただ中。ちまたには数多くの温泉施設ができたが、ここほど充実した施設はまれだった。あれからずっと、私は飽きもせずに通っている。
勝手知ったる何とやらで内湯は素通りし、広々とした屋外の浴場へ。真ん中にどっしりと構える「庄助の湯」を目指す。寒くなるとかけ湯が熱く感じられるが、ここはグッと我慢。足元からだんだん上へ、10杯ほど湯をかぶる。かけ湯は単に体の汚れを落とすだけではない。体に「今から温泉に漬かるぞ」という信号を送り、血圧の変動に対して準備をさせる効果がある。ゆえに心臓から一番遠い箇所から始めて、最後に肩からかけるのがセオリーだ。十分温まったところで、じゃぶじゃぶと注がれ続ける湯口のそばで「うっ、う~ん」という、苦しいのか、気持ちいいのか、自分でもわからないうめき声とともに腰を下ろす。じんわり、じんわりと心地よさが体中に広がっていく。温泉のありがたみを実感する瞬間だ。眼前の西山を見つめるでもなく、ボーッと眺めての入浴。アルカリ性単純泉の柔らかな湯が、私を悩ませる腰痛と肩こりをゆっくりと取り除いてくれろ。
お楽しみの昼食には、女性人気上昇中という「湯の花御膳」をいただいた。温泉入浴と食事がセットになって1600円という良心価格もうれしい。この湯、この味で、このお値段。20年来の友人の新たなる魅力、これは・・・ハマる。
<西スポ2013年12月4日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>
【住所】福岡県宮若市脇田507 【TEL】0949-54-0123(旅館 楠水閣)
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