2014.1/14
「風流」を辞書で引くと、「上品な趣があること。みやびやかなこと。また、そのさま。風雅」と書かれている。まさに今回紹介する秋月温泉「料亭旅館 清流庵」には、そんな表現がピッタリと当てはまる。
福岡唯一の小京都・秋月。全国の数ある小京都の中でも、景観や自然に京の趣が感じられる数少ない存在だ。秋には名所旧跡を紅葉が彩り、春には爛漫(らんまん)と咲き誇る桜並木が町を染める。風光明媚(めいび)な自然を背景にたつ、歴史を感じさせる和風建築の数々。どこを切り取っても絵になる町並みはプロアマを問わず、カメラマンたちの絶好の撮影スポットとなっている。
「清流庵」は、そんな城下町からは少し離れた場所にたたずんでいる。重厚な門をくぐると、そこはもう別天地。知らず知らず居住まいを正してしまう名旅館特有の空気が流れ、期待も高まる。ちょっとリッチな日帰り1万円コースでは、豪華な温泉付き客室もしくは広大な池を望むお座敷にて食事する。無類のコイ好きである私は迷わずお座敷を選んだが、その造りは私の予想をはるかに上回っていた。御殿のように広いお座敷には、その壁一面に平安絵巻を思わせる屏風(びょうぶ)絵。そしてもう一方の全面ガラス張りからは、広い池を擁する日本庭園を望む。こんな贅沢な空間を独り占めするなど、なかなかできる体験ではない。同行のカメラマンには悪いが、この感動、写真で伝わるとも思えない。ここに有田焼のみやびやかな器に盛られた料理が運ばれてくれば、気分はお殿様である。「清流庵」はもともと料亭であり、今でも「料亭旅館」を名乗るほど。料理がおいしくないわけがない。優雅な食事を堪能した後は、これまた日本情緒漂う温泉へ。あまり知られていないが、秋月には温泉が点在しており、どこもアルカリ性の美肌の湯、例にもれずこちらもpH9.7という柔らかな温泉だ。
もうすぐ紅葉の季節。秋月が、その本領を発揮する季節でもある。
<西スポ2013年10月16日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>
【住所】福岡県朝倉市秋月1058 【TEL】0946-25-0023
【HP】http://www.seiryuan.com/