2014.1/11
秘湯、名湯、一軒宿、源泉かけ流し、にごり湯…。温泉好きなら反応せずにはいられない、これらの垂ぜんワード。もちろん私も反応する。一つでも当てはまるとうれしいのに、これら全てを満たしてくれるのが、久住高原の赤川温泉「赤川荘」。国道442号線から山中へ分け入り、緑のトンネルを抜け、ようやく辿り着く一軒宿だ。
もともとは国営の硫黄精錬所の宿舎だったが、半世紀ほど前に全面リニューアル。「赤川荘」として開業した。国立公園内のため開発もままならず、電力は自家発電という秘境っぷりだ。敷地内に3本もの泉源を持ち、その総湧出量はなんと1分間に400リットル。同時に400人が漬かれるほど大きな浴槽を源泉かけ流しで造ることが可能な量だ。しかもこれが自噴しているという、恐るべき温泉力である。湧き出す温泉の量が半端なければ、その質もまた説明が難しいほどスゴイ。泉質名は「含二酸化炭素・硫黄―カルシウムー硫酸塩泉」。特に硫化水素(硫黄と水素の無機化合物)と二酸化炭素の含有量は、全国の温泉でもトップクラス。その成分の濃さは疑いようがないのだ。
さて、うんちくはここまでにして、いざ入浴!浴場には、男女別に内風呂と露天風呂が完備されている。かけ流しの内風呂には、源泉そのままの冷泉の浴槽、加温した温かい浴槽が仲良く鎮座。これに交互に漬かる「温冷浴法」は血行を促進し、血液をサラサラにしてくれるという。その後は、名瀑(めいばく)「雄飛の滝」を望む露天風呂へ。とうとうと流れ落ちる滝の水は、きっと背後に控える硫黄山の伏流水なのだろう。伏流水が「雄飛の滝」を形成するまでに、一体どれだけの年月がかかるのか、その永い月日に思いをはせながら入浴する「ぬる湯」。残暑厳しき折、なんと心地よいことか。
マイナスイオンが充満した森の中、全国屈指の名湯に身を委ねるこの上ない幸福。現世で極楽気分を謳歌する私は、果たして天国に行けるのか? 少々、不安を覚えるほどのひとときであった。
<西スポ2013年9月4日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>
【住所】大分県竹田市久住町久住4008-1 【TEL】0974-76-0081
【HP】http://www.akagawaonsen.com/