ゆけむり紀行

2014.1/7

絶景かな、絶景かな、伝説の海に浮かぶ露天

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絶景の油谷湾に浮かんでいるよう雰囲気が味わえる露天風呂

日本で天平文化が華開いた奈良時代、お隣の唐では安禄山の乱(755年)が勃発した。この反乱の責を問われたのが、玄宗皇帝の寵妃(ちょうひ)楊貴妃。そのため玄宗は泣く泣く楊貴妃をあやめた…というのが史実。だがここに、もう一つの物語がある。いわく、皇帝の計らいで逃げ延びた楊貴妃は日本へと流れ着き、その地で亡くなった…と。実際、楊貴妃伝説の地である山口県長門市油谷には、「楊貴妃の墓」が残る。そしてここに立つ唯一の温泉旅館が「油谷湾温泉 ホテル楊貴館」。20年前、私が初訪問したころからずっと進化を続けている。中国自動車道の下関インターを降り、国道191号へ。到着まで約1時間半の海沿いドライブの始まりだ。福岡の海とは明らかに違う、鮮やかなマリンブルーの日本海。道中の景色は息を飲むほど美しい。途中の角島大橋や角島灯台も、映画やCMのロケ地として度々登場する絶景ポイント。ここではぜひ、大橋を渡り灯台へ寄り道していただきたい。さらに車を走らせると、左手の高台にそびえるように「楊貴館」が姿を現す。昨年の4月に一部フロアや客室、大浴場が装いを新たにリニューアルオープン。取材を決めた理由の1つだ。

到着後、真っ先に向かったのは併設の「海の見えるレストラン あまのゆ」。予約なしで利用できるカジュアルな海鮮レストランだ。生け簀(いけす)には魚がわんさか。釜飯や伊勢エビ御膳、活イカ御膳・・・おいしそうなメニューが並ぶ。しかしそこは取材者の特性か、その土地でしか食べられないものや期間限定など、印象が強いメニューに興味を引かれる。というわけで、数ある中から隣接する下関市の川棚名物「瓦そば御膳」(1550円)に決定。瓦そばに刺し盛り、小鉢、シジミのみそ汁、漬物、ご飯が付いてこの値段。お得感も上々である。瓦そばの具が多く、つけダレの味もグッド!病みつきになりそうな予感がする。しかも温泉入浴料半額の特典付きだ。

そしていよいよ本日のメーン、リニューアルした大浴場へ。湧きあがる好奇心のためおのずとと歩が速まる。チャチャッと服を脱ぎ捨て浴場へ出ると、全面ガラス張りの内湯の向こう側に露天風呂が見える。そこはまるで油谷湾に浮かぶがごときロケーション。石川五右衛門さながらに「絶景かな、絶景かな」と心でつぶやくと、向かいの丘で回転する風車が見えた。そんな景色に圧倒されながら湯に漬かった、その瞬間!「まるで美容液につかっているみたい」という友人リポーターの言葉を思い出した。トロトロ度では”九州随一”の呼び声高い、熊本県山鹿の平山温泉より上かも…。源泉かけ流しではないものの、毎晩浴槽の清掃を行うらしく温泉の劣化も少ない。

リゾート感満載のロケーションに極上温泉、そしてお得で美味しい料理。世界三大美女といわれた楊貴妃を思いつつ、帰路で後ろ髪を引かれること請け合いである。
<西スポ2013年7月3日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>

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「海の見えるレストラン あまのゆ」の「瓦そば御膳」
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リニューアルオープンした「ホテル楊貴館」の外観
  • 【日帰り情報】
  • ●営業時間:9:00~21:00
  • ●料金:大人1,000円・小人500円※「海の見えるレストラン あまのゆ」利用の場合は大人500円・子供300円
山口県・油谷湾温泉「ホテル楊貴館」

【住所】山口県長門市油谷伊上130 【TEL】0837-32-1234
【HP】http://www.hotelyokikan.jp/