ゆけむり紀行

2014.1/5

降り注ぐ陽光、自然に溶け込む渓流沿いの露天

id335_01
陽光が降り注ぐ渓流沿いの露天

4~15年前になるだろうか。TNCテレビ西日本「ももち浜ストア」のプロデューサーが、バブル時代を懐かしむように「たまにはぜいたくなゴルフツアーがしたい!」と鼻息荒く提案。それにスタッフ10人ほどが賛同し、訪れたのが嬉野温泉「椎葉山荘」だった。昼はゴルフ、夜は温泉と宴会、そして翌日またゴルフという強行軍。たっぷりと「ぜいたく」を満喫させてもらった。

佐賀・嬉野温泉街から山里の茶畑を横目にハンドルを握って約5分、清流椎葉川に面し、周囲を雑木林に囲まれた静かな一軒宿だ。全国の多くの旅館が模範とする名旅館「大正屋」の個人旅行者向けの別館でもある。客室はフロントから回廊で結ばれた離れタイプが全14棟。あふれる自然に溶け込んだ和風の趣と、広々とした空間使いにぜいたく感が漂う。木のぬくもりと高級感を両立した宿には、スタッフの立ち居振る舞いなども相まって、凛(りん)とした空気が流れている。その椎葉山荘の正面に建つのが「しいばの湯」。立ち寄りで気軽に入浴できる温泉施設だ。うれしいことに焼き肉レストランが併設され、ちょっとした日帰り旅行気分が味わえる。

温泉の入浴は、結構なカロリーを消費するのをご存じだろうか。温泉に10分浸かれば、ジョギング10分とほぼ同じカロリーを消費すると言われている。心置きなく焼き肉が楽しめそうだが、ここで重要なのは食べるタイミング。入浴前だと温泉の温熱効果で体中の血行が促進され、それゆえに胃の消化機能を減退させてしまう。だから少しでも血流が落ち着く入浴後の方が消化に良い。てなわけで、まずは温泉。男湯の暖簾(のれん)をくぐり露天風呂へ。前回も書いたが、渓流沿いの露天は爽快きわまりない。椎葉川に近い場所を確保し、清流を眺めながらゆっくり浸かる。青空から降り注ぐ陽光が湯面を照らし、ゆらゆらとした光が鮮やかな新緑の葉に反射する。周辺の木々の葉がきらめき、それはまるで自然光のイルミネーション。幻想的な雰囲気に包まれれば長湯にならないわけがない。自然に溶け込む静かな時間にしばし身を任せた。

入浴後は「カロリーを十分に消費した」という思いを胸に「焼肉レストラン山法師」へ。日ごろは大盛りを封印しているが、旅行気分で節制のたがが外れ、宇宙の果てまで飛んでった。しかもカロリー消費後の食事となれば、食べ過ぎに対する罪悪感も薄れるというもの。自然との一体感、陽光と湯面が織りなす希少な温泉イルミネーション、そして絶品焼き肉。ぜいたく感を満喫できる、この上ない日帰り温泉旅行である。
<西スポ2013年5月29日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>

id335_02
木々の緑がまぶしい山あいの景観
id335_03
椎葉山荘外観
  • 【日帰り情報】
  • ●営業時間:しいばの湯 9時~21時
  • ●料金:1,000円(フェイスタオル・バスタオル付き)
佐賀県・嬉野温泉「椎葉山荘」

【住所】佐賀県嬉野市嬉野町岩屋川内字椎葉 【TEL】0954-42-3600
【HP】http://www.shiibasanso.com/