なんすいかく
福岡の奥座敷で湯巡りと美食に寛ぐひととき
山あいののどかな風景が今も残る脇田温泉。元禄時代には、黒田藩の学者・貝原益軒が訪れ、後に風土記に残したという由緒ある温泉地だ。この脇田温泉を流れる犬鳴川沿いに建ち、2012年8月にリニューアルをした「楠水閣」。訪れてまず目にとまるのが一面に畳が敷かれたロビーとラウンジ。畳敷きのためスリッパを履く必要がなく、それだけで我が家のような“ほっ”と落ち着いた気持ちになれるのが不思議だ。客室は、檜や五右衛門風呂といった専用の露天風呂が付く贅沢な部屋に、穏やかな川の流れを望む部屋など、シチュエーションや予算によって好みのタイプが選べる。さらに今回のリニューアルで、展望風呂とベッドルームが備わるモダン和室も誕生。眼下に流れる川のせせらぎを耳に、山里の美しい景色を眺めながらつかる温泉、そして夜はふかふかのベッドでぐっすり……と、まさに立地をいかした籠もりたくなる至福の空間になっている。
こちらは湯巡りも魅力のひとつ。本館にも大浴場に、レトロな雰囲気が漂う家族風呂「夢ごもり」、そしてリニューアルで新たに誕生した家族風呂があるのだが、川を挟んで橋を渡った先にある露天風呂棟「湯乃禅の里」がこれまた素晴らしい。大きな酒樽から温泉が湧き出る湯船や、水車風呂など男女合わせて10種類の多彩な湯船が揃い、さらに「ひだまり」と名付けられた5つの家族風呂でも温泉三昧が楽しめるのだ。夕食は、四季に応じて変わる会席料理を食事処で。前菜からデザートまでの流れを大切に、一皿一皿丁寧につくられた品々は、旬の食材を使用することにより季節感をも味わうことができる逸品。また、量よりも質を重視したい人や、魚好き、肉好きの人のための料理など、人それぞれの好みに合わせた料理プランや追加料金での部屋食の対応などサービスも充実している。旅館本来のおもてなしの心で、旅する人それぞれのシチュエーションを考慮し、多彩なニーズに合わせたサービスを提供する「楠水閣」。今後もその人気は続きそうだ。